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ホーム詩集 > 単行本片桐英彦詩集『緩和病棟』(かんわびょうとう)
書籍詳細

片桐英彦詩集『緩和病棟』(かんわびょうとう)[9784781406732]

販売価格: 1,620円 (税別)
(税込価格: 1,782円)
[【在庫切れ】]
収録作品より
メバル釣り
釣りというのはどうやら気の短い者に向
いた趣味のようで 病院で働いていた頃
気が合って 休日に船を雇っては何時も
一緒に釣りに行った病院の運転手さんも
相当に気短な人だった 若いころは鮮魚
を運ぶトラックに乗って日本中を駆け回
り 何しろ魚を載せているのだから毎日
が時間との勝負だったというだけあって
色んなエピソードの持ち主で その短気
には年季が入っていた 春の鯛釣りから
夏の夜のイカ釣り 秋のアジ釣りと玄界
灘を釣り回り 脊振山の山頂が白く雪を
かぶると海釣りは休みになったが 冬の
夜のメバル釣りだけは例外だった 風の
凪いだ二月の夜に 象の背に似た近場の
磯に小舟をもやって 藻の間に潜む魚を
誘うのだが 近場とはいってもそこに着
くまで走る 吹きさらしの舟の上で寒さ
を我慢するのは大変だった 磯に着いた
頃には指先がかじかんで 餌の小エビを
針に付けるのにも しばらく指を口にく
わえて感覚が戻るのを待つほどである
風は無いが二月の夜の寒さはしんしんと
体に沁み 釣糸の手ごたえに小さなリー
ルを巻いて ようやく全身に血が巡ると
いった具合である 釣り上げたメバルを
つかむとその魚のぬくもりは驚くほどで
 命というのはこんなにも温かなものか
と思い知った 山に雪が降ると魚は深場
に行ってしまうと言った釣り仲間の訃報
が届いたのも去年の寒い時分だった 気
短の彼も さっさと遠い所に行ってしま
ったのだ あれから釣りに行くことはな

(「メバル釣り」より)

*

[かたぎり・ひでひこ(1942〜)]
装丁:和兎
A5判変形並製カバー装グラシン巻
92頁
2014.06.22刊行
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