◆第二句集
草市を過ぐるたそがれ心かな
『蜜豆』の句集世界の中心には、作者の「身体」がある。さらに季語と作者は、「身体」を通じて渾然と同化する。草市を過る作者の「身体」は限りなく透明になり、現し世から逃れ出てゆくかのようだ。
(栞より・奥坂まや)
◆自選十五句より
古池やどんぐりいくらでも落ちる
焚火離れて故郷を後にせり
ことわりもなくいちじくに手を伸ばす
梅雨深く妙な音立て洗濯機
日本や網戸の破れのセロテープ
よその子が隣に坐る夏はじめ
肘ついて秋の金魚を掬ひけり
風呂の灯の暗きがよけれ年の宿
俎板に鱗貼りつく啄木忌
利酒を含みては耳澄ましけり
*
[ひらいしかずみ(1947〜)「幡」同人]
栞:奥坂まや
装丁:和兔
四六判フランス装カバー掛
198頁
2014.07.01刊行