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第63回 滋賀県文学祭文芸出版物表彰
◆俳句叢書 Serie de Blanc 3
清明の山にたましひあづけ来し
掉尾の一句である。還るべきは「清明の山」と覚悟を決め、今、作者は近江に呼吸を合わせて生きている。見るべきものを見るべく、「たましひ」はいつも豊饒なる近江とともにある。
(栞より 井上弘美)
◆自選十五句より
虫売に風の出てくる日暮かな
みづぎはの砂の往き来や蘆の角
小鳥来る羯諦羯諦唱ふれば
夕しぐれ大きな星をもたらしぬ
夜濯ぎや比叡の闇の根に住まひ
ふくろふを彫れば梟鳴きにくる
軍鶏の子の喧嘩はじめる朝曇
スケートの少年父を離れけり
そらごとのやうに今年の桜満つ
隠沼は夕日の高さ蛭蓆
*
[まえだ・せつこ (1952〜)「氷室」編集長]
栞:井上弘美
装丁:君嶋真理子
四六判フランス装
216頁
2013.08.08刊行