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◆客観写生への道
俳句の道はたゞこれ写生。これたゞ写生 素十
本書は、2011年1月1日から12月31日まで、ふらんす堂のホームページに連載した「素十の一句」を一冊にまとめたものです。
◆4月20日
方丈の大庇より春の蝶
「龍安寺」と前書がある。「方丈」は寺院の長老・住持の居所。寺の建物の大きな庇の陰から一匹の蝶が突然降ってくるようにあらわれたのである。下五ははじめ「蝶一つ」であったのを改めたという(倉田紘文『高野素十研究』)。上五中七の大きな空間描写を受け止めるには確かに「春の蝶」のような強引な措辞の方がふさわしい。要所に置かれた「方」「丈」「大」「蝶」の四字の長く引く音が働いて、音の面でも太い調べの句となった。季語=春の蝶(春) 『初鴉』『雪片』所収「ホトトギス」昭和二年九月号
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[ひはら・つたえ(1959〜)]
季語索引付
装丁:君嶋真理子
A6判変形並製カバー装
234頁
2013.10.15刊行