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◆ 第八句集
はつなつやかう書いてみむ巴芹なら
作句開始から三十有餘年、しかし私の内部では年毎に混沌の度合ひは増すばかり。その混沌の中にも新奇なものを発生させる秩序と胎動でも見られれば良いのだが。だから件のブケ・ガルニを擲(な)げ入れたとしても、さうは直ぐに研ぎ澄まされた一品は得られさうもない。なのに一輯を編むといふ大いなる矛盾、無分別。それをも重々承知して、蜥蜴の自切の尾ならぬ、自切の作を一歩でも前に進まんが故衆目に晒すこととする。
(あとがき)
鮎の針どこぞ故山にひつかかる
もてなすに裸になれと勧めたる
とみかうみあふみのくにのみゆきばれ
芽吹後の約束違ふではないか
竹馬や黄泉はぬかるといふ晴子
春深しどの家も間引く子のあらず
惨たるは金魚に深く避けたる尾
戀の字もまた古りにけり竈猫
やどかりのかりねのうさをはらすおと
日短か嵯峨も去来の墓の辺は
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装丁・間村俊一
菊判変型上製カバー装
298頁 2007.09.20刊行
●著者略歴
新潟県生まれ。多摩美術大学卒。博報堂へ入社。福永耕二、能村登四郎に師事。89年、第1句集にて第13回俳人協会新人賞、93年、第2句集で第33回俳人協会賞を受賞。98年「銀化」創刊、主宰。