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◆ 現代俳句女流シリーズ燦2
者は鹿児島の西端、野間半島の笠沙が故郷だと言う。ことにこの地は『古事記』に名を留め、笠沙の浜が古代神々の遊行された場であると知れば、この歴史の背景を負った明媚な風光は定めし作者の望郷の場になろうと想像するに難くはない。私も海辺に住んだ歳月があり、渚の気配に親しく見惚れていたので、幼少時の体感を通したこの心の風景を俳句の原風景とする作者の認識には得心がゆく。思郷の風景との交響の意が表題の「響」に表われているように思えた。
(山上樹実雄)
自選一〇句
モネを見て春の日傘を愉しめり
薔薇百花壺中の家となるもよし
剪りたての?薬を供花しづくせり
ガス灯の名残の街の青葡萄
雄たけびをもて火祭りの始まれり
終戦日音の鳴り出す古時計
百日紅ひとつ道行く死者生者
大夕焼してスメタナの交響詩
舟曳きしあとがそのまま秋の浜
喪の人と落葉の音を分ちをり
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序文・山上樹実雄 栞・高田正子
装丁・君嶋真理子
A5判上製カバー装
112頁 2007.10.02刊行