書籍詳細

藤田直子著『鍵和田秞子の百句』(かぎわだゆうこのひゃっく) [9784781412559]

販売価格: 1,500円(税別)

(税込: 1,650円)

[在庫あり]

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◆豊穣の世界を探る

硝子戸を人の過ぎゆく古雛

古雛が並べられているのは骨董品店だろうか。雛を装飾として置いている和風の店だろうか。いずれにしても、ショーウィンドーの硝子の内側に、年代物の雛が飾られている。それを外から見ているのは作者だが、句は作者の視点からではなく、雛からの眺めとして詠まれている。作者が雛に成りきったとも言えよう。
「人の過ぎゆく」は単に往来のことを言っているわけではない。雛は幾代にも亘って飾られてきたが、人は生きかわり死にかわりして命が継承されて行く。古雛はそれを見つめてきた。芭蕉の「百代の過客」に通じる視座である。

◆草田男の〈空は太初の青さ妻より林檎受く〉も〈種蒔ける者の足あと洽しや〉も戦後間もない時の句である。廃墟の中で生きる力を見出す草田男の詩精神に秞子は惹かれた。秞子もこの世の無常を思い知ったからこそ、この世の美しさを詠い上げたいという欲求に駈られたのである。
「萬綠」では草田男が写生を提唱していたので秞子は努めて吟行に行った。
草田男から学んだものは多いが、季語を象徴的に生かすこともその一つだった。そして季語を象徴的に働かせる句も写生句と同様に、先ずは心を無にして対象に対峙し、己の胸底から湧き上がるものを?んでこそ成るものだと知った。
(本文より)



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ご本の紹介
(ふらんす堂「編集日記」)



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[かぎわだゆうこ(1932〜)「未来図」主宰]
[ふじたなおこ(1950〜)「秋麗」主宰、「未来図」同人]
装丁:和兎
四六判変形ソフトカバー装
222頁
2020/2/21刊行
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