◆妻の遺品ならざるはなし春星も 『虻峠』(昭和五十三年作)
先生が平らな地に家を建てて転居されたのは前年の早春である。そして半年も経ないで奥様が癌だと分かり、入院手術された。奥様は「運河のために句会は休まないでね」といい続けられた。「風花や失語の妻の眼が宙に」という暮石の句があるが、こんな状態の妻を病室に置いて句会に出られた。書家だった房子夫人の書き残した紙は堆かった。「すこしづつ焚火に入れて遺品焼く」という句があるが、焚火をしながら仰いだ空に出ていた春星も暮石には妻の遺品だと思われたに違いない。
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(ふらんす堂「編集日記」)
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[うしろぼせき(1899-1995)]
[いばらきかずお(1948〜)「運河」主宰]
装丁:和兎
四六判変形ソフトカバー装
220頁
2017/11/10刊行