◆十七音への果敢なる挑戦
菖蒲湯の沸くほどに澄みわたりけり
この句は、間違いなく狩行の代表作のひとつである。浴槽に張った水はもちろん透明な美しい水であるが、それが熱せられるとともに変化が現れたというのだ。感覚的な把握かもしれないが、「沸くほどに澄みわたり」という断定には動かしがたい説得力がある。ふだんより少し熱めに沸いた湯かもしれない。新湯の鋭さを思わせ、青い菖蒲を浮かべれば、まさに切れそうな刃のようだ。好みの温度設定をした給湯設備で供給される湯では、水との違いを目で見て感じることなどないであろう「澄み」である。
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(ふらんす堂「編集日記」)
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[たかはしゅぎょう(1930〜)]
[かたやまゆみこ(1952〜)「香雨」主宰]
装丁:和兎
初句索引付
四六判変形ソフトカバー装
220頁
2018/12/25刊行