◆第一句集シリーズ/I
胡瓜持つ胡瓜の中に水の声
胡瓜を手にしたとき、その手触りや重さから胡瓜のうちの「水の声」を聞くのは、なんとなく分かる気がする。胡瓜だって人間だって、体の大部分は水、だから、ゆきさんは胡瓜に近いし、胡瓜はゆきさんに近い。
(解説より・坪内稔典)
◆自選十句
蕪という明るいものを買ってくる
蜜柑剥く旅程のごとき音たてて
いつまでも羽が残って春の風邪
音楽はさよりの動きにてドアへ
ありったけ胡瓜食べ喉ほのあかり
こいびとに金魚の箇所と石の箇所
日の盛り固まりかけの詩のしずか
発光の葡萄をしまう君の唇
死体役すいっと起きて星月夜
梨を切るたびに湖面の現れる
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(ふらんす堂「編集日記」)
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[はらゆき(1962〜)「船団」所属]
解説:坪内稔典
装丁:和兎
A5判ペーパーバックスタイル
72頁
2020/1/1刊行