◆造化の再話者
「俳句は造化の語る即刻の説話と考へてゐる。俳人はその再話者である。や・かな・けりを疑つたことはない。なるべくものを言ひたくないものにこれほどうつてつけのものはない」(『樸簡』あとがき)「造化の語る即刻の説話」等々、これら仁喜の文言は、すべて「古人の求めたる所をもとめ」んとする求道の心から発せられたものだ。芭蕉は仁喜がことさら敬愛する人物である。ことに〈秋近き心の寄や四畳半 芭蕉〉の句を好んだ。この句は大津の医師木節亭で巻かれた四吟歌仙の発句である。この座に集まったのは芭蕉、木節、惟然、支考の四人である。寿貞の訃報に接した直後の芭蕉を労わる連衆の心配りを汲み取った芭蕉の心が「心の寄や」の措辞に表われている。そして仁喜の求めんとする理想の境地もまたこの発句の世界にある。
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[あやべじんき(1929〜)「泉」顧問]
[ふじもとみわこ(1950〜)「泉」主宰]
装丁:和兎
四六判変形カバー装
218頁
2014/10/10刊行