◆収録作品より
2月12日(火)晴
真夜中のあかるさとなり春みぞれ
窓の外でさらさらと音がする。何だろうと思って覗くと、霙が降り出しているのだった。向かいの家の屋根はすでに白く、街はひっそりと美しい。
◆あとがきより
日記を書くのなら、東京での日々の生活と、産土の地である京都の四季や歳事を合わせて書きたいと思った。円山公園の枝垂ざくらはもう咲いただろうか、上賀茂神社の蛍はどうだろうなどと、いつも慣れ親しんできた京都の風物のことを思っているからである。日記を書くとき、慌ただしく過ぎ行く日常に「今日の京都」を重ね合わせた。そうすることで、自分の原点を確かめていたように思う。
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[いのうえひろみ(1953〜)「汀」主宰]
装丁:和兎
四六判変形クロス装
388頁
2016/03/03刊行
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『顔見世』掲載句についてのお知らせ
読者の方から、『顔見世』の12月3日(354ページ)に掲載の「顔見世や祖母が贔屓の仁左衛門」の句について、富安風生の「羽子板や母が贔屓の歌右衛門」(『草の花』竜星閣1933年刊)に似ているのではないかというご指摘を頂きました。
よって、井上弘美先生からのお申し越しにより、上記掲載句は取り下げることとなりました。
しかし「顔見世」は表題句のため、下記句に差し替えさせていだきます。
「顔見世やまだ結ばざる祖母の帯 井上弘美」
版元としましても、類句の指摘から洩れていたことをお詫びし、
再版の際は差し替えさせていただきます。
読者の皆さまにはご迷惑をお掛けいたしますがご了承下さいませ。
2016年6月9日