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片桐英彦詩集『ヒポクラテスの髭を剃る』(ひぽくらてすのひげをそる) [9784894024500]

販売価格: 1,500円(税別)

(税込: 1,650円)

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◆ 著者第五詩集
二十年勤めた病院を辞めました
真冬の深夜に点滅する
信号機も
夜明けの配膳室にうずくまる
早番の猫も
夕暮れの待合室で待つ
病人よりももっとやつれた家族も
みんな
さよなら
僕は出ていくよ
──病院を止めて何をしてるんだ
──もっと世間の役に立つ事をしろ
本を読んでいる背中に
こんな言葉が突き刺さって
ステゴザウルスみたいに
なった僕は
のっそりと
伝説の医神が生きていた
霧深い古代の道を辿り
そそり立つ現代の病院の芝生の上に

おずおずと
一歩を踏み出すところです

著者(ステゴザウルス(あとがきにかえて))より

<目次>
進歩/ヒポクラテスの髭を剃る/飼う/空欄を埋めよ/炉端の鬼手仏心/青いブランコ/病棟を遠く離れて/緋文字/浸す/影踏み/数字/雨が降ると/花言葉/初雪/漂流/脱け殻/窺う/俗医者/病棟のクリスマスキャロル/夜のランナー/手術待合室/ステゴザウルス(あとがきにかえて)

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雨が降ると

     雨の日には
     外来の患者さんが少ない
     ことがある…
     まるで
     今日一日だけは世の中から
     病気の人が少なくなったような
     そんな気がするから…
     雨が降ると
     だから
     その日一日だけ
     僕は
     少し嬉しくなる

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進 歩

     医学は
     と言うか
     科学は
     すごい速さで進んで
     僕等は
     ますます貧乏になる
     あれもまだだ
     これも足りない
     と
     進歩すると言うことは
     そういう事だ
     僕等の後ろから
     追いかけて来る足音が
     ますます
     明瞭に聞こえてくると言うことだ
     急いで生と死を定義しないと
     その境界が薄れてしまうと
     誰かが
     僕等を追い立てているが
     振り向いても
     そこにあるのは
     自分の
     影ばかり

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●著者略歴
1942年佐賀県唐津市生まれ。1967年九州大学医学部卒業
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