第1回中新田賞スウェーデン賞受賞!
◆露の世のきらめき
露の世の砂積みあげし銀閣寺
銀閣寺の庭には、銀沙灘と向月台という二つの盛砂がある。それは無論、海から生まれたはかない命の、造化の根源への熾烈な帰依を象徴している。だから、この露の世に砂を積みあげる。積みあげ続ける。すると、どういう事が起こるか。白く乾いた砂が、しだいに輝きを増す他界からの光を吸ってついに銀沙と化し、まさに落ちようとしてふくれあがっている葉末の露が、命そのもののきらめきとしてこの世に現前するのである。
(帯より)
◆帯選出十句より
魚は氷に上り風切るクピドの矢
折りとれば風の貌なり山辛夷
紅しだれ土に触れゐる雨夜かな
径よぎる水の流れや春の闇
ぼうたんの昼の乾きの愁ひかな
夜半も降る蝉のしぐれや恋熄まず
宵闇やわれより熱き犬の胸
下総のアダムの骨や月祭る
露の世の砂積みあげし銀閣寺
疲れたる鳥もあるべし小夜時雨
*
[たかぎかずえ(1942〜)]
帯:眞鍋呉夫
装丁:伊藤鑛治
四六判並製フランス装函入り
200頁
1996.02.18刊行