◆第三句集
私は俳句の大前提は「韻・季・切」の三つであると理解していますので、その根本的なルールの範囲内で、なおかつトレーニングのために三六〇句すべてを十三字で表記するという制約を自らに課しました。「宇津呂比」ではまだまだ言葉に振り回されていますが、徐々に脳内ネットワークが再構築され、言葉を手なずけていく過程が記録されていくことと思います。
(あとがきより)
◆自選十五句
をりをりの夜空畳みて年新た
二月はや背向(そがひ)の山のうら若し
蜑の家(や)のひひなの肌ゆ汐湿り
万端のおほどかなるや競ひ馬
夜は夜をうは書きしつつ薪能
翡翠や雨濯にそらの拭はれて
素麺と冷むぎ不仲なるうはさ
蛍火のをりふし闇の浅瀬にも
帰省子のはじめ一日だけは客
新涼のそびらに蒼き夜がある
坂あらばさかに踊りて風の盆
尻かくす発想のなき相撲かな
ワシコフの人相書を石榴まで
歯応へに大地の軋み痩せ牛蒡
着膨れに美醜のありて主に醜
*
Amazonでの本の購入はこちらより→ Amazon
ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[こうちふみお(1949〜)「銀化」同人]
装丁:君嶋真理子
菊判変形上製カバー装
228頁
2022/03/24刊行