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[世界と彼の間に 『未踏』を読む 山口優夢]
◆形成の可能性を攻め続けることが形式への最大の礼儀
やがて高柳君は、波郷や湘子がそうしたように、青春詠の時代を遠い故郷として捨て去り、見晴るかす荒地に足を踏み出すだろう。しかし、高柳君の目には、そこに私たちには見えない俳句の沃野が広がっているのだと信じたい。彼自身が選んだ「未踏」の句集名が何よりも彼の決意を示している。
(序より・小川軽舟)
◆自選10句より
ことごとく未踏なりけり冬の星
つまみたる夏蝶トランプの厚さ
うみどりのみなましろなる帰省かな
どの樹にも告げずきさらぎ婚約す
キューピーの翼小さしみなみかぜ
くろあげは時計は時の意のまゝに
紙の上のことばのさびしみやこどり
秋草や厨子王にぐる徒跣
あをぎりや灯は夜をゆたかにす
洋梨とタイプライター日が昇る
*
[たかやなぎかつひろ(1980〜)「鷹」編集長]
序:小川軽舟
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装
211頁
2009.06.22刊行