◆ 著者第一句集
<龍宮城よりの勾配春の浜>
砂浜のゆるやかな勾配を見ていて、それはもしかすると、あの龍宮城につづいているのではないかと思った。春のうららかな季節ならではの句で、発想が新鮮。
鷹羽狩行(鑑賞三句より)
<指一本立てて一歳風薫る>
<しやぼん玉生まれてすぐに丸くなる>
<春愁や造花はしぼむことならず>
これらの句は一歩誤れば平明のみの句になりかねないが、季語の力で核心を引き締め内部構造のある句に仕上げている。これも英樹氏の特徴であり、俳句の大衆化を心掛けている英樹氏の信念の現れであろう。
桑島啓司(跋文より)
人文字の不死鳥よ飛べ天高し
監督に脳天向けて大試験
教師より年上もゐて夜学生
裸子を抱き上げわれも裸なる
合流ののちは急がず春の水
序句/鑑賞三句/帯文・鷹羽狩行 跋文・桑島啓司
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 188頁
●著者略歴
1955年和歌山県生まれ。1988年「狩」入会。1995年第17回狩座賞(狩新人賞)受賞。狩同人。俳人協会会員