多分に自分を意識した大きな眼玉で、俳句形式への信頼を高めつつ、自己の表現に徹する句集。
◆ 著者第二句集
<年齢は深さなりけり自然薯>
「年齢は深さなりけり」は、この作者の生活感情であり、それをうけがうように、「自然薯」に、読み手の理解を托している。そこには読者への強制は何もないのである。季語の働きが作者の感情に直結するところに俳句の楽しみがある。その自然さをうけがう。
この原裕の選評を追うと市村季子さんの俳句志向がやや見えてくるような気がする。更につけ加えれば、日常身辺のかなしさ、うれしさが実に丹念に
<大まじめ蜻蛉の眼玉並びゐる>
<われの眼と似たる出目金眩しくて>
などの句にみられるように、多分に自分を意識したその大きな眼玉で俳句形式への信頼を高めつつ自己の表現に徹している。
原和子(序文より)
正解にこだはり続けゐのこづち
背すぢある裸木となり定まれり
金魚玉のみとなりたる広さかな
冬の川おのれの中を流れけり
洗はれてゐたき白雨と遭ひにけり
一木に星移りゐる秋気かな
序文・原和子 装丁・君島真理子
四六判上製カバー装 188頁
●著者略歴
1935年東京都八王子市生。1985年「鹿火屋」入会。1996年鹿火屋奨励賞受賞。句集『冬銀河』。現在、鹿火屋同人、俳人協会会員