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月明やものみな影にかしづかれ
栞・井上弘美
『花衣』の歳月、作者は決して平坦ではなかった日常を丁寧に積み重ね、それを超えることで新たな地平を手に入れたように思える。(栞より)
●自選十五句
てのひらをすべらせたたむ花衣
人波に押さるるなかの御慶かな
あめつちを結ぶ雨糸初山河
胎内へ戻りゆくごと蛍狩
新米の犇く声を研ぎにけり
命あることも知らぬげ雪ばんば
月明やものみな影にかしづかれ
雪虫は雪にあくがれ生まれけむ
一粒ものこさず去りし夕立かな
あたたかや山にふところたなごころ
はつなつの月の大きく地を離る
大いなる福耳もちて飾売
今の世に雌伏てふこと龍の玉
夜のうちに逃げ出してをり雪うさぎ
うみやまのあはひにふぶくさくらかな
[「狩」同人(1955〜)]
定価 本体2400円+税=2520円
栞・井上弘美
装丁・君嶋真理子
4/6判並製ソフトカバーグラシン巻き
200頁
2008.04.08刊行