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スカート揺らし春風の量計る
年月を追うように、作品に深味と味わいが加わって、しみじみとした情感が感じとれる。生来の柔軟な詩精神に、落ち着いた描写力が加わったことに由る進境と思われる。今後が楽しみでもあり、頼母しくもある。(序)
子を置きて働けば北風激しかり
洗ひ髪振り向きて子を驚かす
車より白靴すつと出て銀座
川波のめくれしままに結氷期
少年の引出しに鍵青胡桃
吊革に眠つてしまふ秋の暮
黄落や頬杖はピザ焼けるまで
冬に入る仕事の手帳角ぼろぼろ
砂時計めく炎天の砂丘かな
産声と聞く暁の蝉の声
門柱に倚りて話して盆の客
望の月更けて浴後の手の匂ふ
啓蟄や水際の水の盛り上がり
下向きに咲き上向きに落椿
茎立や均等法後の女どち
(自選15句)
序文・岡本 眸 栞・小島 健 装丁・君嶋真理子
四六判並製ソフトカバーグラシン巻き 184頁
●著者略歴
広渡 詩乃
本名・紀子。昭和31年6月14日東京都生れ。昭和54年早稲田大学卒業。広告代理店勤務。クリエイティブ・ディレクター。昭和60年「朝」入会。平成12年「朝」同人。平成14年「朝」新人賞。俳人協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)