第29回秋田県芸術選奨
◆第一句集半島の二の腕あたり昼寝せり
いつもどこかに諧謔の味を染み込ませている。粘っこい句姿が、いつも軽快な物言いを湛
えている、といってもよい。ここ数年の鉦二の俳句は、その融合の調べに円熟味が加わって、本格の域に達しつつあるようにおもえる。
(序より:金子兜太)
◆自選一〇句
あぶり絵の鬼立ちあがる桃の花
花ひとすじ白神山地越えゆけり
白魚啜る音して干潟の絵ろうそく
桃林にて入浴のかたちせり吾妹
半島の二の腕あたり昼寝せり
出羽三日月どれも破れて桃袋
濃紫陽花僧の素早き着替えかな
男鹿島や石に泥塗って雨乞い
鴨翔てり百の津軽三味線なり
秋の蜂野の石に耳あるごとし
*
[むとうしょうじ(1935〜)。「しらかみ」代表]
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
224頁
2003.10.10刊行