◆第37回俳人協会賞本賞受賞
どうして今回、「凡」という句集名にしたのか聞かれるけれど、特別な理由があったからではない。近年、「凡」という語に心惹かれるものがあったから、ということになるだろう。あるいは、虚子先生の教えが無意識のうちにはたらいているのかもしれない。ともあれこの際、「凡」ということを私なりに追及してみたいと思う。
(著者あとがきより)
◆十句抄より
滝落ごしたり落ごしたり落ごしたり
祭着の襟新しく老いにけり
もてなしの網戸を入れて待ちくれし
藍こなし藍こなしては日もすがら
蜻蛉の石に止まれば羽を伏せ
鈴虫のこの音飼はるるものならず
秋風や今はのご瀬の只見川
催してきては添水の音を刎ね
音ごてもなく木の葉降る木の葉降る
?田の枯れゐて安房はなつかしや
*
[きよさきとしお(1922〜)「若葉」主宰]
装丁:伊藤鑛治
四六判上製箱装
208頁
1997.07.20刊行