第3回中新田俳句大賞
第26回 泉鏡花記念金沢市民文学賞受賞!
◆正直 金子兜太
玉宗の青年期をおもうと、さすらい(流離)の語が出てくる。勤めを辞めてさすらい、出家したあともさすらっていた。困った男だとおもいながら、正直な奴だともおもっていた。ようやく能登の寺に落ち着き、俳句をはじめたと聞く。どんな句をつくるものやら。
すいせんなのかなんなのか、こんなのが本当のすいせん文かもしれないと自負。呼呼。
序・沢木欣一
◆自選十句
まろび落つ羅漢の首も煤払
今の世に銭乞ひ歩くしぐれかな
これ以上背伸びはできぬ梅の花
正直なおたまじやくしは浮いてくる
床に入る足裏の汚れ夏安居
水に落つ蛇のまなこに映るもの
遺されしものへつくつくつくぼうし
秋風やおいらはどこの馬の骨
蟷螂の貌は先刻暮れてをり
露けさに眠るも僧となりしより
*
[いちぼりぎょくしゅう(1955〜)]
序:沢木欣一
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
214頁
1997.09.25刊行