瀬古さんの俳句は、ことごとくすぐれた表現力のもとから詠われており、それが読者にここちよきカタルシスをもたらすのであろう。もちろん、これほどの俳句を構築し得たのは、いうまでもなく鷹羽狩行という言葉の天才に学んだからだが、さらにいえば受け皿としての瀬古さんの感性が豊かでやわらかで、そしてふところの深さを備えていたからでもある。そのことも忘れてはなるまい。遠藤若狭男(帯より)
●自選一〇句
曼珠沙華墓参なりしに髪を染め
花吹雪風の女神の妬心とも
鎌の刃を薙ぎし草にて拭ひけり
蠅がまたとまりてをりし蠅叩
対局を控へし座敷淑気満つ
やは肌にふれもみずして桃選ぶ
白薔薇の騎士と呼びたき姿かな
虫籠を暮しに編みて虫飼はず
風となり蓮の浮葉で遊びたし
神の手に委ね聖夜の手術室
序句・鷹羽狩行
跋・遠藤若狭男
装丁・君嶋真理子
四六判上製函入り総クロス装
188頁