平成3年から平成15年までの作品を集めた句集。
〈水飲んで雨を見つめる羽抜鶏〉
この句は、秩父の荒川沿いの宿に稽古会で泊った時の句である。農家が近くにあり、鶏舎もあった。その写生句であるが、「雨を見つめる」と感じ表現したことで、羽抜鶏の姿がよく出ているとともに、もののいのちのあわれというものが入った句となった。
深見けん二(序文より)
収録作品より
代々が嘉衛門の家松手入
かまつかや日和つづきの蔵の町
腰越状縷々と伝へて青葉冷
旅をはる青邨旧居の栗一つ
春深し自愛の壺を膝の上
土用波心ゆるさば攫はれむ
校舎古り樫も古りけり夏燕
影一つ引きて兄住む秋灯
春着縫ふ絹の重さを膝頭
屯して雪の鴛鴦音立てず
序文・深見けん二 装丁・君嶋真理子
四六判上製フランス装 180頁
●著者略歴
大正13年11月7日生れ。昭和30年表千家入門。昭和49年表千家地方講師免許。昭和61年表千家地方教授免許。昭和63年公民館俳句に初めて参加。深見けん二主宰「花鳥来」会員。高橋青塢主宰「梢」会員