中川礼子という作家を世に紹介できることは嬉しい。ここに過去十四年の句集を改めて目を通すこと三回、私は礼子さんの持つ力を確認した。佳句を作る人だとは思っていたが、実はこれ程の力があるとは気付いていなかった。句集にまとめたとき、その実力がはっきりと見えるものだとつくづく考えさせられた。実に気持のよい驚きであった。
礼子さんの俳句の基礎は、きちっとした写生と、豊かな抒情である。そしてどっしりと落着いた句風であり、女性によくあるちゃかちゃかした才気ではない。有馬朗人(序文より)
麦の芽やドイツ圏に入りたる
鰐口の音におどろく寒さかな
八月の藪の中から衣川