書籍詳細

植松紫魚句集『海流』 [9784894027097]

販売価格: 2,571円(税別)

(税込: 2,828円)

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向日葵は道端に枯れ浜の風
紫陽花を雨打つ夜は眠からず
夏草は煌く河に沿うて生ふ
薄の穂限りなく出て家遠し
花冷の巷絢爛として暮るる

昭和60年から平成9年までの句をまとめた第1句集。

今思うと、平成五、六年頃は割と俳句に費やした時間のエネルギーの多かった時期であったようだ。そのあと自分をとりまく環境にも大きな変化があったが、平成九年頃までの句には、題材や興味の点で、共通のものが多かったと感じられる。そこで今回はこの年のものまでをまとめてみた。 (帯より)

●著者略歴
本名・植松史行。昭和37年神奈川県小田原市に生まれる。東北大学医学部卒業。昭和60年「嵯峨野」入会。平成6年「嵯峨野」若竹集同人。平成10年「嵯峨野」月光集同人。俳人協会会員。

昭和六十年~平成元年
病棟の雨きりもなき若葉かな
寒明の空や飛行機音行くも
手花火の消えたるあとの波頭
鰯雲日帰りの旅果てにけり
桔梗や喜怒哀楽の少き日
撫子やバス終点は山近く
石段を登るや花は海の側
向日葵は道端に枯れ浜の風
朧夜や電車行先無きごとく
大屋根の色新しき若葉かな
青嵐ここより山の一歩なり
一人また一人ビル出て晩夏かな
芽ぐむ樹の下に絶えざる瀬音あり
紫陽花を雨打つ夜は眠からず
七月の廃道むずと歩きたし

平成二年~五年

波の上に星確かなる余寒かな
山麓の刈田挙りて暮れにけり
萩咲いて前後途切れし峠かな
春雨の山道藪にかくれけり
春宵や花鉢に濃き翳ありて
夜桜の幹を巌と見て過ぎぬ
行春や一木一草水に映え
夜に出でて青田は青き風通ふ
夏草は煌く河に沿うて生ふ
熱帯魚家中が寝てをりしかな
プール打つ百の雨脚忙しげに
秋の山下りて眩しき町にゐる
大いなる陽を負ひ立てる冬河原
薄の穂限りなく出て家遠し

平成六年~九年

凍てし道幾たび曲がり市に出でし
春堤歩けば星の従きくるよ
草若し高圧線の鳴る下に
花冷の巷絢爛として暮るる
花冷の手紙ポストに落つる音
春雨の触るる翠や上り坂
萩原や北の山脈影襲ふ
秋晴や磨かれし窓一つも無く
暖房の音長々と夜を過ごしぬ
歳晩や音も無く行く川と波
葦枯れて水には空の青さかな
大寒や星沸々と田舎空
夏近く流木洗ふ波に触れ
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