浦川聡子の俳句には、第11回現代俳句協会新人賞を受けた作品をも含めて、たとえば、「アリスのごと鬼灯市に紛れたり」「冬の楽章ヴィオラから歩き出す」「胸元を大きく結び春の風邪」といったぐあいに、繊細で、どことなくおどけた、可愛い空間がある。そして、その空間は、そのまま音楽といえるほどに、ユニークな雰囲気をもっている。オーケストラでヴィオラを弾き、ピアノを教えている日常が滲み出ているのだろう。金子兜太
冬の楽章ヴィオラから歩き出す
寒き目をしてフルートに息入るる
(第11回現代俳句協会新人賞受賞作より)