ユーモアをにじませた句、人情の機微に触れた句、対象の本質に迫った句など、多様性に満ちた332句を収める。
◆ 著者第一句集 〜飛躍の妙〜
<山々を畳みて軽き登山地図>
「山々を畳みて」まで読んでおやと驚き、「軽き」に至って混乱させられ、しかし「登山地図」で大いに納得する。地図を確認した人の表情、その背後の山々まで見えてくるようだ。
句集『まごころ』は、こうした飛躍の妙が随所にあり、他にもユーモアをにじませた句、人情の機微に触れた句、対象の本質に迫った句など、多様性に満ちている。鷹羽狩行(帯文より)
<死ぬほどの事にはあらず髪洗ふ>
<きりぎしに追ひ詰められて羽抜鶏>
生命感溢れる作品とは、このような句を言うのであろう。迫力と実感をもって読者に迫って来る作品を作る女流俳人を見かけなくなった今日、次代の俳壇を担う俳人として貴重な存在である。桑島啓司(跋文より)
菊作ることにかけては村一番
子の声を夫の声かと昼寝覚
これ以上大きくなれず種なすび
盆僧の来るまで何も手につかず
溝浚へ出て来ぬ人のことを言ひ
括られて揃ふ切口盆の花
序句/鑑賞六句/帯文・鷹羽狩行 跋文・桑島啓司
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 195頁