◆ 『玄武』に次ぐ第二句集
私が志向し描くものは、私自身の美学に普遍性があるという信念、つまり証明不要の公理のようなものを信じてのことだから、描くものは自己体験よりも想像の世界であり、自らが創り出した虚構の世界である。
私はそこにこそ私の詩の意味を見出しているのだが、その傾向は恐らく私自身の体質、気質といった根本的なものに因るだろうから、生涯その呪縛を逃れることは出来ないだろう。著者(あとがきより)
真うしろを狐の通る眩暈かな
月見草一本は野を出でゆけり
包帯がゆるみはせぬか梟よ
春の港みんな遠くを見ておりぬ
退屈な柩の窓の星月夜
六月やメビウスの帯ぬけ出せず
現身のうしろめたきを踊りけり
装丁・君嶋真理子 四六判フランス装 180頁
●著者略歴
1932年佐賀県生まれ。「白燕」同人。現代俳句協会理事。日本文芸家協会会員。NHK学園短詩型文芸センター講師。1998年1999年2000年の各年、世界一周クルーズ“にっぽん丸”(商船三井客船)にて俳句の講師を務めた。第10回現代俳句協会新人賞佳作入選。第12回現代俳句協会評論賞佳作入選。第46回現代俳句協会協会賞次席入選