◆俳人協会賞本賞受賞
俳句は造化の語る即刻の説話と考えてゐる。俳人はその再話者である。や・かな・けりを疑つたことはない。なるべくものを言ひたくない者にこれほどうつてつけのものはない。
(あとがきより)
◆十句抄より
かたくりの花の韋駄天走りかな
祭馬曳くも責むるもほいほいと
すみずみを叩きて湖の驟雨かな
晴れてきし蛍袋の下の土
露の淵盆供が音を立てにけり
いつまでもいつも八月十五日
取ることのなければ雲の通草かな
からむしを大吹きしたる猪の跡
神棚に熊撃銃の弾丸二つ
初夢の死者なかなかに語りけり
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[あやべじんき(1929〜)]
装丁:千葉皓史
四六判並製カバー装
184頁
1995.03.01刊行