おおおおと大秋の神現れませり
豊かな言葉のひろがりとその調べ、時として揺曳する死のイメージが作品に奥行と陰影を与える。平成8年から13年まで6年間の作品364句を収録した第8句集。
いまここが天国地獄初日の出
父の指鯊に変りてゐたりけり
顔つつむ紙いやがりぬ雛納
歩々つひに祈りのごとし秋の道
とんと手をとんととび箱春の空
逃水を追ふ逃水となりしかな
相生橋さまざまな夏わたるなり
装丁・君嶋真理子 四六判フランス装函入り
●著者略歴
昭和6年、東京生まれ。東京大学仏文科卒業。同大学院で比較文学専攻。詩人として活動を始める。昭和40年ごろ短詩型に関心を抱き、俳句を作りはじめ、加藤楸邨に師事。「寒雷」に入会して、寒雷集賞受賞、同誌編集長になる。昭和49年、句集『猫町』を刊行、主宰誌「槇」を創刊、句作、評論活動に集中。昭和64年、評論集『かな書きの詩』で俳人協会評論賞を受賞