◆ふらんす堂文庫
生涯一編集者かな初暦
「平凡」「平凡パンチ」「アンアン」「クロワッサン」等の雑誌を手がけ世に送り出した名編集者清水達夫氏。「俳句は晩年の親友」とも語ったその清水さんの自選遺句集を刊行。この句集は下町の情緒とパリの粋を愛し、最後まで青春性を失わなかった清水さんそのものである。
私の本業は雑誌編集者である。俳句は、私にとって、編集者としての余技だと思っている。しかし、その余技の俳句が、私の人生でこんなに大きな比重をもつものなろうとは、夢にも考えていなかったことである。俳句をはじめて十年……、私は、いま七十七歳をすぎて間もなく七十八歳を迎えようとしているが、俳句は、まさに私の晩年の親友となってしまった。
(『ざつだん俳句ばなし』”あとがき”より)
◆収録作品より
迎春の松かしこまる大壺かな
太古よりよせかえす波初茜
東京に富士みゆる日や初茜
初刷りを校了にしておでん酒
初刷りをかこみ激論編集部
太箸の家族らの名は孫の筆
太箸に飼犬の名も加えけり
初明り男子厨房に餅を焼く
初明り妻の寝顔の口ぼくろ
うたたねのいまが佳境か春炬燵
*
[しみずぼんてい(1913〜)]
栞:大橋歩
装丁:千葉皓史
A6判フランス装
80頁
1993.02.03刊行