〈食べて身のかろくなりたる土筆和〉〈半夏生食べては器よごしけり〉〈帰る刻きて花豆の花真赤〉われわれはこれらの句を忘れない。普通の家庭人のありようの中に己の存在意義を問いつづけた彼女の、これらは紛れもない俳人石田いづみの作品である。
(栞より)
◆石田郷子抄出七句より
父に恋問はるる松の芯立つ中
白コスモス暮れきるまでの刻きらふ
麦の芽や子が呼ぶごとく乳満ち来
葉桜や夫の机にすばらくゐる
蟻踏んで今日のかなしみはじまりぬ
水かけておん名覚ましぬ菊の墓
帰る刻きて花豆の花真赤
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[いしだいづみ(1929〜1986)]
栞:綾部仁喜
装丁:千葉皓史
A6判フランス装
76頁
1999.10.01刊行