目線より上に海ある春の坂 春風邪に声艶めきし男かな 六十五歳という人生の区切りの年を迎えた著者が、句だけでなく文も収録し、自分の趣味をもとにして、楽しみながら作った句集。
◆ 俳諧自由
今回、この本を作ったのは、若い奴らを畏れ入らせてやろうということではなく(少しはそういう気もあるが)、六十五歳という人生の区切りの年を迎えたからである。自分の趣味をもとにして、楽しみながら本を作ろうと思ったら、こういう本になった。
句だけではなく文も入れたのは、句の数が足りないというわけではなく(少しはそういうこともあるが)、俳句と文章とを混ぜ合わせてみたいと思ったからである。
著者(本文より)
目線より上に海ある春の坂
鵺を射る方に蠢く春の闇
夕立来天地の別を消しながら
鬼棲むといふ秋風の谷を往く
柿実る村に茜といふ少女
静かねと妻が呟く霜の夜
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 215頁
●著者略歴
上智大学教授。文学博士。1936年東京生れ。慶応義塾大学文学部卒業。同大学院修了