◆新詩集
羽根のあるものは、その羽ばたきの中で夢をみる。
『ファースト・アンソロジー』につぐ第2詩集
◆収録作品より
熱帯への憧れ は続いていた 夏 という言葉を聞いただけで 目が眩むような 喘ぎ にも似て 炎熱の迸り 真昼の太陽 あの強烈な陽射の熱は夜の闇まで 引き摺られ 熱帯夜 は白昼の燃え立つ 熱がそのまま 入り込んでくる 熟れ過ぎた果実 生温かい息吐くような名も知らぬ トロピカルフルーツ の数々の饐えた匂い 発散させ どこまでも続く火照り は決して冷やされることなく 湿気は 景気を 余計に肌に 密着させ 体は熱でうだり ねっとりと纏い付き 呼吸するのも億劫になる程 喉の渇き 息苦しさ 気が遠のいてゆく 眩暈 滴る汗 を拭う手の甲 疼き 私はどこへも 逃れられない
(「熱性の秘密」より)
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[せいかかおる]
装丁:君嶋真理子
B6判ペーパーバック装
64頁
2003.11.25刊行