◆ 著者第二詩集
この詩集は、少年時代からこれまでに出会った印象的な事柄を記録するつもりでまとめた。わたしの追憶は、昭和三〇年代の日本経済復興期から、高度成長を経て、バブル崩壊に至る時期とかさなる。追憶は単なる懐古趣味ではない。時の集積に埋もれている記憶を掘り返すことは、生きるうえで欠かせない作業である。記憶は深い森のなかにある。森には陽だまりもあれば闇もある。めぐりあった記憶は、そのまま現在の根であり、未来への種子である。著者(あとがき「記」より)
<目次>
東の門がひらく/悲しい酒/た・す・け・て/慰留の鮨/ミスタードーナツの彼女に/地階から/きつねを求めて/京都にて茫漠とする/蕎麦屋の娘/引っ越しの朝/赤い星の王冠/白桔梗/葬儀のあとで/残された永遠の日に/観音堂/群生/
午睡/午前三時/エルサレムの少年/途上
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群 生
百万本も咲くな
曼珠沙華
群生は好きではない
壮観は好きではない
ただ独りできっぱり咲け
孤高に咲け
そして冬への覚悟を
私に伝えよ
百万本も咲くな
曼珠沙華
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装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 78頁