[詩人・鈴木志郎康による『雪柳さん』解題]
◆新詩集
わたしにとって、詩とは日常の中のディティールである。様変わりしていく日常のなかで幻影としてなお、わたしを引きつけてやまないもの……。
(著者)
『冬の集積』『ウラン体操』につぐ渾身の第3詩集。
◆収録作品より
こういう絵を描かなければならなかったひとの運命
こういう詩を書いて死んだひとの痛ましさ
日曜日の午後
疲れて
散らかった
部屋で
《夕陽学舎》
あの厚ぼったいねずみ色の門札は燃やされてしまったか
四〇年後に戻ってみると
人けのないテニスコート
今年も稲の実る頃
空に怒りの放電が走るだろう
白い紙も黒い紙もごみ袋に詰め込んであります
あす通りの集積所に出してください
少女は自分を研ぎ澄まそうとする
(「少女懸垂」より)
*
[うどうかおる(1939〜)]
装丁:君嶋真理子
B6判ペーパーバック
58頁
2000.09.19刊行