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◆ 第一句集
「兄の忌や母の背丸き春袷」略歴によれば、よね子さんの俳句入門は、平成十年である。したがって兄の孝一さんは、よね子さんが俳句を識る、それ以前にすでに他界されておられたと思われる。亡き兄の忌を修するため、春のある日、母を囲んではらからが皆相寄る。頼みの長子に先立たれ、あとに遺された逆縁の母である。齢を重ね、春袷の背が少しく丸くなってもいる。淡々とした調べの中に老い母を気遣う気持ち、亡き兄を偲ぶ思いをしみじみと汲みとることができる。(山崎ひさを)
病む姉の口に一粒さくらんぼ
木犀のことに香る日姉逝きぬ
花冷えや面会謝絶のドア重し
亡き姉の帯締めにけり白桔梗
小春日の中のよちよち歩きかな
大旦孫が隣に寝てゐたる
神田祭神田生れの夫と来て
ベランダに夫と酌みをり今日の月
枝豆やわれに過ぎたる夫のゐて
しやぼん玉飛ばして夫の誕生日
序文・山崎ひさを
装丁・君嶋真理子
四六判フランス装函入り
210頁 2007.11.11刊行