◆美しく生きる…
草それは俳人桂信子の人生を貫く香気であり、風それは1人で生きて来た女の心意気である。俳誌「草苑」に1985年から1999年の15年間に亘って掲載した俳句とエッセイを一冊に収録。旅先のこと、映画の思い出、酒についてなどさりげなく書かれた文章を通して、自らを律し、矜持をもって生きる女性の姿が浮き彫りにされる。
詩人の吉岡実氏が七十一歳で亡くなられた。
吉岡実氏が亡くなられた日、私はそれまで籠のなかにいた蛍を庭に放した。(略)
蛍は始め辺りの草をほのかに照らしていたがやがてゆらゆらと木立に添って高くのぼっていった。その青い光は詩人の魂が蛍に化したかと思われるうようであった。
(本文より)
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[かつらのぶこ(1914〜)「草苑」主宰]
装丁:君嶋真理子
A5判並製フランス装
248頁
2000.05.25刊行