私は会社生活に入ってから詩を書き始めた。(中略)つまり詩を書いてきた年月は、そのまま会社で働いてきた年月でもある。そういうこともあって書き始めて以来、こだわってきたのは一連の「カイシャ」の風景である。その風景の中で私は「ワタクシ」や単に「男」としてしか存在し得なかった。素顔のままの私は会社ではあまりに無防備なので、ワタクシになってようやくカイシャに踏みとどまっている。そうしてワタクシがかたるカイシャの中で、あぶり出されるように私がカイシャにかたられる。カイシャに流され変容してゆく、変容させられてゆくワタクシを見据えるために。深刻で痛切なのだが、何となくコッケイ。
(著者)
*
[やまさきじゅんや(1956〜)]
装丁:君嶋真理子
四六判並製
96頁
1997.04.07刊行