◆ある愛の物語
かほこ
君は歩いてきた
たったひとりで
青い六月の 雨あがりの
けれども少し脱臼した陽ざしのなかを
どんな美しい喩もたずさえず
ひとつの直接性にそって
いっせいに整列する欅並樹の道を
君は歩いてきた
(収録作品より)
本篇は決していわゆる「散文詩」ではない。かといって、普通の詩集でもない。ひとつのドラマ性を持っているからである。しかしドラマ性があるからといって、小説というわけではない。小説的な通奏低音をひびかせながら書かれた物語詩、といったところであろう。あるいは、詩で書かれた小説、と言ってもいいかもしれない。本篇に「詩集」ではなく「詩小説」と銘打ったのは、そのような理由によるものである。
(あとがきより)
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[ひはらまさひこ(1947〜)「橄欖」「舟」同人]
栞:高木護 草野信子
装丁:君嶋真理子
A5判並製
154頁
1997.04.05刊行