◆素朴派の輝き
阿蘇豊の詩の特徴をひとつだけあげるとすると、非常にリズミカルで、歯切れがいいことだ。だから、ついホイホイよんでしまう。それはそれで一向にかまわないが、阿蘇豊の詩にふくまれるさり気ないユーモアやアイロニーを見落とすことのないように。
(帯より)
朝のテレビニュースで
キャスターが
「ここはひろびろとみどれがひろがり…」
と言った
みどりがみどれとなって
ピッコロのように
妻がトーストをかじりながら
笑った
同時刻
あちらで
やっぱりトーストをかじりながら
こちらで
みそ汁をすすりながら
いっせいに
ひろびろとみどれがひろがり
ミ・ド・レ
オルガンのように
笑いさざめく
みどれの五月
(「みどれ」より)
*
[あそゆたか「暴徒」「セルヴォ」「カイエ」同人]
帯:中上哲夫
装画:相沢育夫
A5判並製ビニール巻き
98頁
1996.10.16刊行