◆待望の新詩集
ビート詩人として登場して以来30余年。とうにケルアックの死んだ齢を過ぎ、いま、静かに迎える成熟の季節…。新境地をひらく第7詩集!!
海って
水がいっぱいあって
ずうっとアメリカまでつづいているんだぞ
そして
海にはおそろしい海坊主がすんでいて
子どもをひきずり込んで
頭からガリガリ食べちゃうんだぞ
ぼくらは―兄と妹とぼくは―砂の塔をつくったり
渚を走ったり
父のひろい背中に乗っかったり
絵日記にかききれないほどの思い出を
リュックにつめて
帰った
しかし
パラソルの陰の母は生まれたばかりの弟の世話で忙しく
ついに海へは入らなかった
その二人はもう古ぼけた写真の中にしかいないけれども
(「海水浴」より)
*
[なかがみてつお]
装丁:君嶋真理子
A5判上製
82頁
1996.09.16刊行