◆魂の無垢な叫び
ぼくらは日々、自分たちの生活の向こう側にあるマイナスの極を遮断されて生きている。ものの腐敗する形や匂いを遠避けられたままだ。しかし、人は光の中でのみ生きる訳ではない。闇が精神の深い安堵をもたらすことを忘れてはならないだろう。瀬沼さんの詩を読んでいくと、静かな安らぎが胸深くわきあがってくる。石の街のどこかを確かに流れている野生の水の音のように。
(帯より)
あなたは呟くように口をひらいた。
(コート、あたたかいわ
(聞こえるような気がするの
(水の音のようなものが
(地の底から流れてくる水の音が
(「水の音」より)
*
[せぬまたかあき]
帯・栞:八木幹夫
装丁:スタジオ・ギブ 川島進
四六判上製
104頁
1996.06.22刊行