◆待望の定本
摩天楼より新緑がパセリほど
近来、俳人の海外旅行が多くなり、その句を多く見受けるが、この句ほど新鮮に、この句ほど印象的な句はない。
斬新である。俳人の海外旅行は今後ますます殖えるものと思わねばならぬが、この句など必ず胸裡に灼きつけて行って欲しいものである。この句を知ってから高層ビルにのぼると外が覗きたくなる。そしていつもこの句に感心するのである。
(帯より)
◆収録作品より
海峡を水道と呼び墓遅し
転舵せしとき夜桜の強濁光
恋の猫暗夜行路を跳び交し
さくら満ち二夜は波浪注意報
芽吹く流木この島の創世期
つねに十二片そのために花篝
夜の新樹詩の行間をゆくごとし
教会の漏り新緑の雨なれど
一湾にヨット狼藉西東忌
土手を焼き尽くして入水したる火よ
*
[たかはしゅぎょう(1930〜)「狩」主宰]
帯:大野林火
装丁:伊藤鑛治
四六判上製
198頁
1996.04.26刊行