◆連想と飛躍
まくなぎや愚論空論くりかへし
訴へることあるごとく残る虫
親しげに蚊の寄ってくる寺厠
など、著者のまなざしは平明で柔らかい。大上段に構えるでもなく、静かな語り口で淡々と日常座臥、虫魚草木を詠い紡いでゆく。こうした俳句の行き方は、作者の行き方でもあり、それが『大津絵』から、きわやかに立ち上がってくる。
(帯より)
◆帯選出十句より
来客に空より応へ松手入れ
年ごとに子の数減りて地蔵盆
消灯のあとも眠れず水中花
かりがねや征きて帰らぬ人あまた
気ごころのとんと分からぬ闇汁会
寝不足のまま元旦の顔となる
あんかうの這ひつくばつて糶られけり
ことごとく道ふさがれて祭かな
気が立つてゐるかも知れず秋の蜂
通るたびこぼれて減らず萩の花
*
[みずのせいらん(1933〜)「狩」同人 俳人協会会員]
帯・序句・鑑賞五句:鷹羽狩行
跋:丁野弘
四六判上製
194頁
2001.02.21刊行