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第40回蛇笏賞受賞!
◆ 第十句集
妻とするめんない千鳥花野みち
私は私で昨年米寿を祝っていただいたのだが、平成十四年に珍しく大病をし、その入院中に妻を失うという、言わば人生の谷間を流離う経験をし、未だにその余波を抜け切っていない。体力はないのだが気力だけでも一新充実するために、妻への鎮魂と、取り残されている人生谷間の三年間の句に、日の目を見せてやることにしたのが本著である。
(あとがきより)
◆自選十五句より
破魔矢手に大和心のありやなし
松立てて笑ふ門とは言ひもせし
亡き妻を探しにきたる初雀
山茱萸の花老に今日老に明日
ミモーザの花をこぼるる知と情と
囀の風に微塵となることも
瀧の面をわが魂の駈け上る
万緑の中のわが身と妻の身と
曝しある良書にまじる一書かな
今生の月の懸りし厳島
*
[ごとうひなお(1917〜)「諷詠」主宰 「ホトトギス」同人]
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー函装
256頁
2005.11.15刊行