◆第二句集
第17回現代俳句協会新人賞受賞作家
『星痕集』に次ぐ第二句集
たった十七音によって既存の言語秩序のレールを一瞬のうちに脱線させてしまう重層的起爆力の源が、「定型」にあるという想いは、今や私の中では確信に近いものになっている。
(あとがきより)
◆収録作品より
ノルウェーの森の眠れる白シーツ
煮凝に太陰暦の時流れ
童貞のごとき冬日の大理石
紫陽花は肺浸潤を病んでいる
新しきピアノ氷の匂いせり
牛乳が性的にあり朝曇
青ぶどう涙みるみるあふれけり
新鮮な放浪に似て梨を剥く
金管楽器は冬野菜の匂い
湯ざめして王の孤独を想いおり
夏カレー喧嘩のように食べたまえ
一枚の切手裏返せば白夜
蟻地獄のぞく少女の薄化粧
騒然と標本の蝶天の川
ひまわり直立圧倒的なさみしさ
*
[やまもとさもん]
装画:飯野真由美(エッチング「朝の空気」)
A5判並製
108頁
2000.05.10刊行