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◆第20回俳人協会賞新人賞
詠みつづける意志
確かな定型感覚と写生の力が見事に結実。
藺草慶子という人を想いうかべるとき、その静かな面ざしの内側に勁くねばりづよい実作者としての決意を常に感じてきた。
山口青邨・斎藤夏風という師系に恵まれた人ではあるが、このたびの『野の琴』には、かの古館曹人氏の「ビギン・ザ・テン」道場に学んだ成果も底力となって輝きをみせはじめている。歩きつづけ、詠みつづける意志の人に拍手を送りたい。
(黒田杏子)
◆自選十句より
一山の寝落ちてしだれ桜かな
押し寄せて来ておそろしき流し雛
あたらしき墓のまはりの霜柱
蛇流れゆく鎌倉の暑さかな
まつすぐに慰霊碑に来し白日傘
七夕や川を渡れば草青く
するするとこの月明を蜘蛛上る
ぶらんこの影を失ふ高さまで
牛市や赤い椿が泥の上
花火見しきのふの石に坐りけり
*
[いぐさけいこ(1959〜)「屋根」同人 「藍生」会員 俳人協会会員]
序:斎藤夏風
四六判並製
184頁
1997.04.15刊行